割れるタイヤでポールに登るロボット

こんにちは、トクイテンの森です。
トクイテン共同創業者の森と豊吉は岐阜高専電気工学科の同級生でロボコンに出場したメンバーだったというのは、度々紹介しているのですが今日はそのお話。もう22年も前になるので、あまりおじさんの昔話を書いてもとは思いますが、社内で読んでみたいという声があったので思い出話をしたいと思います。

ロボコン出場が決まるまで

ロボコンは1999年と2000年に電気工学科のクラスの有志で出場したのでした。1999年は6人、2000年は3人抜けて8人入って11人というメンバーで、その両方に森と豊吉は参加していました。余談ですが、もうひとり続けて参加したメンバーは豊吉の中学からの同級生のN君です。
岐阜高専にはロボット研究会というロボコンなどに出場するための部活動がありますが、ロボコンに出場するためにはこのクラブに参加している必要はありません。今はわかりませんが、当時は高専ロボコンに出場する2チームは学内で公募で決定していました。応募したチームが企画書の提出とプレゼンを行い、校長などの教員が採点して出場チームを決定するルールです。
2000年に関しては、我々有志チームとロボット研究会の2チームのみが応募して、これで決まるかと思いきや、教員が一応ルール通りのプロセスで決定したいということで、ロボット研究会にもう1チーム応募しろというお達しが来て、3チームがプレゼンに臨みました。
経緯からも出来レースで自分たちが通ると思っていたら、アイディアの実現性が疑われたらしく、ロボット研究会の2チームに決定したと連絡がありました。今考えると客観的には正当なプロセスですが、おかしいと思っていたらロボット研究会がやはり2チームは運営できないと辞退して、結局有志チームが合格するという、紆余曲折を経て出場が決まったのでした。
ロボコン2000 東海北陸地区大会 左:森裕紀 右:豊吉隆一郎 若い!細い!
ロボコン2000 東海北陸地区大会 左:森裕紀 右:豊吉隆一郎 若い!細い!

割れるタイヤでポールに登るロボット

ロボコン2000の競技は「ミレニアム・メッセージ」と呼ばれ、高いポールの上にメッセージ性のあるオブジェを乗せるというもので、長いアームを伸ばしたり、空中を飛ばしたり、ポールを登らせたりといったアイディアにより実現されました。
私達の実現性が疑われたアイディアはポールにタイヤを強い力で押し付けて、無理やり登るというものでした。確かに、この方式ではモーターが2つ必要で、登るための力も押し付けるための力も必要になるためモータやギアが重くなり、さらに力が必要かもしれないという点が懸念の理由だったと思います。
アイディアを練るために鉄工所を経営している親戚のおじさんのところに行って話をすると、楕円形のタイヤや回転する位置をずらしたタイヤを作れば回転するだけで押し付ける力がでるのではないかというアイディアをもらえました。タイヤとポールの密着が離れた瞬間には、U字型の金具をポールに引っ掛けることで落ちることを防ぐというアイディアもそのときに出てきて、早速、製作に取り掛かりました。まずは簡易的に、丸いタイヤに巻くゴムを円周より短く切って、ゴムがある場所には押し付けがあり、ガムがない場所は空回りするように作ってみると上手く登れました。このまま行こうかとも考えましたが、登って止まる、登って止まるという尺取虫型の動きに納得できず、さらに考えていたのを覚えています。
そんな中で、あるとき作業場でウトウトしていると、タイヤが回転する前は隙間が空いていて、回転し始めると隙間がなくなるイメージが湧いて、頭の中でタイヤがグルグルと回り始めました。そこで、タイヤとして巻いていたゴムの端を伸ばした上で接着せずに広げて棒に引っ掛けて、回転し始めると結果的に閉じるという形にすると基本的には上手くいきました。同時に、ゴムが横にそれて、その瞬間にロボットが落ちる事態が頻発することも分かりました。
ゴムが横にそれることを防ぐために今度は、旋盤で丸く削って作っていたタイヤを糸鋸でざっくり切ってしまい、蝶番でつないでみました。そうすると見事に横にそれずに毎回正しく登ることができるようになりました。
これにより、最初はスペースが空いていてポールを難なく受け入れるのですが、モータが回りだすと開いていたタイヤが自然に閉じて、タイヤとポールが密着して登り始める「開閉式のタイヤ」という奇妙な仕組みが発明されたのでした。
 
今回はこれでおしまい。好評なら続けます。
実験の様子。ちゃんと登れるだろうか…
実験の様子。ちゃんと登れるだろうか…
上手く登れたようだ。
上手く登れたようだ。
 
森が思いついた、「丸いタイヤを割る」という押しつけと移動を一つのモータで行う一石二鳥の発想が良かった。横になってウトウトしているとアイディアが出てくるのは今も同じかもしれない。
森が思いついた、「丸いタイヤを割る」という押しつけと移動を一つのモータで行う一石二鳥の発想が良かった。横になってウトウトしているとアイディアが出てくるのは今も同じかもしれない。
 
地方大会の様子。ロボットの近くで操縦しているのは森。
地方大会の様子。ロボットの近くで操縦しているのは森。