トクイテンメルマガ 第5号
トクイテンの共同創業者の豊吉です。トクイテンメルマガの第5号をお届けします。
3号ではMisocaを辞めた後、農業大学校に通うなどして次の事業を農業に決めたのですが有機農業をしている農業法人に訪問して一気に変わったという話をしました。今回はその続きになります。
その農業法人は、私が出会う初めての有機農法の生産者でした。農業大学校では慣行農法と呼ばれる従来からある(といっても70年程度の歴史)化学肥料や農薬を使った農法だったので私は有機農法についてはほとんど知らず「健康志向の人がやる農法なんだろうな」ぐらいの理解しかありませんでした。
しかしその農場の土をみてまずびっくり。布団のようにふかふかで、足を入れるとくるぶしのあたりまで簡単に沈みます。そしてちょうど収穫時期だったニンジンを生で食べてさらにびっくり。私が研修で育てたニンジンとは全く別の味です。おいしいだけではなく、にんじんの嫌な味もほとんどしません。生産者の人に聞くと、それはきっと肥料の入れすぎによってそういう味になっているとのことでした。
慣行農法でも農薬の仕様などは厳格なルールがあるため、私は有機野菜などを好きな人は心配のしすぎと思っていたところがありました。しかしこれほどまでの味の違いがあるとは思ってもおらず衝撃を受けました。「こんないいものならなぜ広まってないのか?」帰りの車では私はそのことで頭がいっぱいでした。
それから有機の生産者に教えていただいたり、自分で調べる中でいろいろなことがわかりました。(参考:有機農業をめぐる事情 農林水産省PDF)特に驚いたのは化学肥料は文字通り化学的に作られたものであり、その生成過程で石油や天然ガスが必要だということです。もちろんこれがなければ食糧の生産は頭打ちになり人類はこれほど増えることはできませんでしたが、この方法は今後もまだ人口が100億人までは増えるという中で、ずっと続けられる方法ではありません。
これは私にはちょうどガソリン車と電気自動車への転換と同じようにみえました。ガソリン車は安価で便利でしたが持続可能ではありません。そこで最初は高価ですがなんとかして電気自動車へ転換していこうという流れができ、徐々に技術革新によって価格が下がり、多くの人の感覚として将来的には全部電気自動車になるだろうとなってきました。
農業もこれと同じことが起こっています。有機で作られた野菜は今はまだ高価で、誰もが買えるものではありませんがこれらへの転換は不可避なものなのです。誰かが有機の作物を当たり前の価格で誰にでも手に入るようにしていく必要があります。
有機農法が広まるにはさまざまな課題がありますが、栽培の手間や、厳密な管理の必要性など、そのいくつかはロボットやAIの過去にはなかったもので解決できるかもしれないと私は思い始めました。
またそれだけでなく、テスラがわずか創業20年程度でトヨタの時価総額を抜いたように、業界の大きな転換期には必ずスタートアップやベンチャーにチャンスがやってきます。
ビジネスとやっていくにはただ情熱があるだけでは続きません、どうしても経済的な原動力が必要です。増加しているとはいえ、有機の野菜というのは普通の野菜に比べてほとんど売れていません。しかしこれまで無かった新しい市場が誕生するということでもあります。
ここまで考えて、私の農業への情熱と、有機農業への転換という必然性、そして新たな市場の誕生という経済的原動力と次々とパズルのピースが集まってきたように感じました。あと必要なのはなぜ我々ならできるのか?という点です。そこで登場するのが共同創業者の森さんになります。
では、続きはまた次回