サイエンスとビジネス

こんにちは。トクイテンの森です。暖かくなったりぐずついたりと不安定な天気が続きますね。
先週、ゴールデンウィークの一週間は名古屋でのロボット開発と農場での誘引作業を行いました。
 

サイエンスとビジネス

アラヤCEOの金井亮太さんが「サイエンスと経済をつなぐ」と題したブログを公表して、自分としても大きく共感した少し書いてみようと思います。
 
金井さんと初めて会ったのは、確か阪大の助教の時に研究室の教授が主催した飲み会でした。確か、大阪の千里中央の「がんこ」というお店だったかな。当時は、イギリスの大学での准教授を辞められてアラヤを起業したばかりだったと思います。脳の構造計測などを使ったビジネスについてのお話を聞いた記憶があります。
金井さん自身、元々、「意識」を研究する科学者です。意識という研究対象から、どのように科学的に研究すべきかというところから考えざるをえない状況で、科学という活動そのものにも造形が深いのだと感じます。
アラヤは人工知能を中心とした事業をしていますが、科学者の雇用も行っていて、公的な研究費を獲得したり、アラヤでの研究活動を経て東京大学の准教授として異動される方も出ています。その意味で、アラヤは自分の最終的にやりたいこと(研究所設立)に近く非常に参考になります(研究所設立の夢はテッククランチのインタビューでも答えたのですが、日本のテッククランチの消滅と共に消えてしまいました…😢)。
サイエンスとビジネスが別々のものでなく、好循環を起こして共に発展していく。戦前の理研が達成したような、世界の真理を探求するハードなサイエンスと莫大な富を築くようなビジネスがお互いに影響し合いながら進んでいくような、組織は金井さんも目指すところなのでしょうし、私も夢見ています。
こんな論文をロボットが書いてくれる?
こんな論文をロボットが書いてくれる?

サイエンスの自動化

金井さんは記事の中でサイエンスの自動化についても言及されています。
物理学や工学など確立されている科学分野では、論文の形式が決まっていて、文章のテクニックより中身の勝負!という感じで、分野によって一部の論文は2-3ページで終わってしまうものもあります。そう考えると論文はXMLのような機械可読なファイル形式でも良いのかもしれませんが、人類の発展に貢献するという観点からは「人間が読める」ということも重要な要素です。
自然言語で記述された先行研究論文を人工知能が読み込んで、それに基づいてテーマを決定し、理論化して、実験計画をして、ロボットがデータを取り、解析をして結論を出し、論文を書いて投稿する。査読も人工知能が自動的に行う。将来的には、そんな世界が現れるかもしれません。実際、化学系や製薬系では実験の自動化が推進されロボットによる大量な条件での実験も一部で実用化もされています。
私は、人間が実行できている問題で、入力と出力、その良し悪しの基準が決まっているのであれば、その問題は人工知能によって(少なくとも人間程度には)早晩解かれるだろうと考えています。例えば将棋や囲碁は人工知能が名人に勝つのは不可能だと言われたところから発展し見事に勝って見せました。ロボットなど実世界が絡む問題ほどその解決の進みが遅いですが、それでも解かれるでしょう。科学研究では、テーマ設定の後の事件計画と実行はいわゆる人工知能が今後どんどん進出していくと考えています。
そう考えた時に考えなければならないのは、何が入力か出力かよくわからない、その価値もどう定量化すればわからないことに関して、自動化が可能かということです。科学研究でいうとテーマ設定が最たるものです。確立された分野で論文が短くて済むのは、その分野の価値観や前提知識が確立されていて細かく説明する必要がないことにも理由があります。では、研究テーマの設定のできる人工知能の可能性はあるのでしょうか?

研究テーマを決められる

最近、発表された人工知能(例えばDall-e2)の中には芸術的な才能があるのではと思わせるモデルが提案されています。これらは、とにかくデータを与えて対応を学習させた結果、自然言語の表現にあった、「いかにもありそうな、けれど興味深い画像」を生成するなど、良し悪しの判断を最初に明確に定めづらいけれど、人間にとって納得感のある出力を出すようになっています。もしかすると、「価値観」に関する明示的な定義なしに、あるいは、非常に抽象度の高い定義(体系的知識を更新する研究は良い)だけから、より良い研究テーマを考え出せるような人工知能が現れるかもしれません。もしかすると、それは最初は人工知能が大喜利をするような「面白いけれど、何の役にたつの?」と思われるようなものでしょう。
人工知能ロボットが更新していく科学的知識に基づいて、さらに別の人工知能ロボットが科学研究をしていく…。これこそ我々が目指すべき技術的特異点(※)かもしれません。意外なところに、ヒントが隠させれいるのでしょうね。
 
※人工知能だけで科学が進んだ先にある人間との接点など倫理的問題は別にありますが、それは別の機会に書くかもしれません。

参考